コーヒーは、お酒やタバコと同じ嗜好品と言われるものの一つです。嗜好品が普通の食べ物、飲み物と違うのは、脳の快楽中枢を直接刺激し、「おいしい」と感じさせる薬理活性成分が含まれていることにあります。コーヒーに含まれる薬理活性成分が、カフェインということになります。ご参考までに申し上げれば、お酒はアルコール、タバコはニコチンが薬理活性の成分になりますが、ここでは話をコーヒーに戻します。
本来「おいしい」と感じる味覚や嗅覚は、主に口腔内、鼻腔内で感じ取る風味がもたらす刺激が脳に伝わった感覚です。コーヒーの場合は、これらの「おいしい」と感じる要因に、カフェインが加わります。カフェインは、おいしさの情報が、体内の器官や神経を辿って脳に届けられる過程をショートカットして、快楽中枢に直接作用し、快い(おいしい)感覚を生じるという仕組みをもたらします。この仕組みは、一般によく知られていることで、「コーヒー=カフェイン」とのイメージを強く持つ人も多くいらっしゃるようにも思われます。
このように「おいしい」と感じる要因にもなるカフェインですが、薬理作用を含むが故に、実際に、体に良からぬ影響をもたらす場合もあります。
良くも悪くも少量であれば、影響は少ないと一般に言われていても、一部の病気の症状のある方や、マタニティの方等、心身を少しでも慰わらなければならないときに、不安要素になるかもしれないカフェインを控えることは、とても尊重されるべきことと考えます。
コーヒーは好きだけど、カフェインを控えなければならない、あるいは摂取を調整しなければならないという方のために、コーヒーの商品開発も高度に進められてきました。今ではほとんどカフェインを取り除きながら、とてもおいしいデカフェやカフェインレスコーヒーが、多種多様に販売されるようになりました。カフェインが入っていなければ、コーヒーじゃない!おいしくない!と言ったとすればのは、かなり偏った話のように思います。
ここで、おいしさの要因となる、カフェイン以外のコーヒーの味の成分について、みていきたいと思います。
浅煎りから深煎りまで、焙煎の加熱が進む過程で、コーヒーは苦味を増していきますが、コーヒーの苦味成分の一つであるカフェインは、生豆のときが最も多く、非常に熱に強く、僅かにの昇華性を持ちますが、焙煎が進む過程でほとんど量は変化しないと言われています。コーヒーのカフェインによる苦味は苦味全体の1割から3割程度で、他の苦味の多くは、生豆に含まれる成分が化学反応によって新たに生じた成分に起因します。それらの苦味成分の代表が、クロロゲン酸ラクトン(CQL)と、ビニルカテコールオリゴマー(VCO)と呼ばれるものです。どちらも、カフェインよりも少ない量(閾値)で苦味を感じ、カフェインよりもコーヒーらしく、10倍ぐらいの苦味があると言われます。つまり、コーヒー独特のおいしい苦味は、カフェイン以外の成分の味と言ってもいいと考えられます。
また、料理を含めおいしさの理論の中では最も重要な化学反応の一つと言われる、「おこげ」のメイラード反応(アミノカルボニル反応)も、コーヒーのおいしい苦味を生み出す要因になります。アミノ酸と糖類が加熱によって促される化学反応です。特にコーヒーの場合は、クロロゲン酸の反応によるもので、他と区別して、コーヒーメラノイジンと呼ばれることがありますが、これもカフェインは関わっていません。
・・・改めて、カップ一杯のコーヒーのおいしさの要因を振り返ってみます。
生産地でコーヒーの種から、果実が栽培され、収穫され、地域の特性を活かした生産処理が行われ、流通され、焙煎され、抽出され、そして提供される。おいしいコーヒーには、これら一連のサプライチェーンのどの段階においても、一貫した体制、工程、品質管理の維持が求められます。
カフェインも、コーヒーをおいしくする重要な要素のひとつですが、製造の中で生み出され、研究、技術開発により創造される無限のおいしさの中では、ごく一部の要素に過ぎないのかもしれません。
デカフェ、カフェインレスコーヒーは、科学的根拠に基づき、特定の保健の目的が期待できる、機能性食品です。
コーヒーのカフェインを上手にコントロールできれば、コーヒーの楽しみ方も、もっと広がると考えます。
※農林水産省のウェブサイトでは、カフェインの過剰摂取に注意を呼びかけながらも、「コーヒーやお茶の摂取の有用性」と題したコラムも掲載し、適切な摂取のためのの情報を発信しています。ご参考としてご覧ください。

